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【演劇】LAST SHOW

 時間が経てば経つほど長くなるわけで。なにをそんなに語りたいのか。というより、なぜ端的にまとめることができないのか。アホだからです、そのとおりです。


『LAST SHOW』
作・演出:長塚圭史
出演:風間杜夫,永作博美,北村有希哉,中山祐一朗,市川しんぺー,古田新太

<<あらすじ>>
 地方の小さな映像制作会社に勤務するディレクターの石川琢哉は、元子役で今はバラエティ等で活躍するタレントの轟美弥子と結婚。幸せな夫婦生活を送っている。
 彼は、動物愛護に命を賭ける“博愛の人”・渡部トオルのドキュメンタリーを手がけていたが、方向性の違いからカメラマンの中島と対立していた。
 ある日、幼い頃に別れた実父・勝哉が新婚家庭を訪れる。自宅をリフォーム中という勝哉に、自分たちの家に泊まるように進める琢哉。
 その瞬間から、狂気に満ちた1日が始まった。

 ネタバレを含む長文感想は以下。
 
 
 
 <<役バレ>>
北村有希哉=石川琢哉(映像制作会社ディレクター)
永作博美 =石川美弥子(旧姓:轟美弥子。タレント)
中山祐一朗=中島(映像制作会社カメラマン)

古田新太=渡部トオル(動物愛護ボランティア)

風間杜夫=石川勝哉(幼い頃に別れた琢哉の実父)

市川しんぺー=ワタシ


 まったく個人的な話で恐縮ですが、かつてオリジナルでカニバリズムの話を書こうと思って色々資料を漁ったりしていたので、アレのシーンについてはばっち来い!状態でした。むしろ、もっとカミング! なぐらい。
『はたらくおとこ』の廃棄物喰いのシーンも、目をきらきらさせて(脳内)見ていたので、場内が一斉に「うぇ……」とどよめく例のシーンも「ニヤニヤ♪」でした。
 ………………人として、なんかおかしいのかもしらん(不安)。
 いや、私は犬も人も食べませんよ。食べませんけどね。それを好むようになった人の心理状態というのは非常に興味深いわけで、その帰結としてのむさぼり食いというのは想定の範囲内。ゆえに“食いかけトリュフにかぶりつき”の場面は、ある種の愉悦に近い感想を抱いてしまうのです。
 ………………やっぱ、人としてなんかちょっとどうだろう(懊悩)。

 考えてみれば人肉喰いというのはタブーなわけですが(考えるまでもなくタブーだ)、そこに至るまでの道筋がキレイについているものだから、「そら食べるわな」と妙に納得してしまう。あそこまで力説されたらねぇ。食べない方がおかしいよね、キャラ的に。
 そうして長塚圭史という人は、そこをきちんと描いてくれる。だから、長塚ワールドで行われることには説得力がある。たとえどんな珍奇なことでも。騙されやすい私。

 ラストシーンのあと。琢哉が食べたかどうかは疑問。彼は食べるだろうか、食べないだろうか。あれほど“普通の人”な琢哉が。
 あ、でも食べるかもしれない。「なんだか哀しい」と言った勝哉の一言が、彼に食べさせるかもしれない。もう一人じゃないんだ、俺の中に一緒にいるんだと言うことにして、自分を納得させてしまうのかも。
 でも、そうしたら美弥子はどうするんだろうなぁ。我が子を殺した男が夫の中にいる、と思ったら、一緒に居られないかもしれないし、もう一度ちゃんと産み直して、きちんと愛情を与えて育てたいと思うかもしれない。
 前者なら再び悲劇だし、後者なら幻想的母性の固まりな気がする。


【琢哉】
 あまりにも善良すぎて、ちょっと腹立たしくなる部分もあり。あんなに憎まれてる実父・勝哉に対して、それでもなお信じよう、説得しよう、理解してもらおうとする姿に。諦めろよ、と思ってしまう。
 でも、そこで諦められないから、赤の他人だと喧嘩別れで済むことが、どこまでもどろどろと陰湿になっていくんでしょうけどね。 自分の親だったら……やっぱ理解してもらおうとするかもしれない。二人の間に横たわる「離れていた時間の所為」だと思って。
 勝哉を殺そうとする美弥子に対して「……親父なんだよ」とぽつりというシーンは、はっとするほど良かったですね。その前の、“ワタシ”と拓哉の対比があっただけに。

【美弥子】
“ワタシ”との会話で泣きました。「あなたがいいの」という一言が勝哉に対する当てつけに聞こえるほど。いや、当てつけてるのかもしれないが。
 琢哉がいかに“才能あるディレクターか”を力説するシーンが良かった。可愛くて、一生懸命で。彼を支えるために“汚れ役”を引き受けようとする潔さ。でも、夢ばかり見てる琢哉自身を責めようとはしない。
 終始、凛としてましたね。でも一番好きなシーンは、マヨ掛けられた事に対する憤りを訴える場面でした。ちょっと、挫けかけてるとこがね。やっぱり可愛かった。

【渡部】
 食べて欲しいとは思わないけど、あの告白を聞いたら見逃しちゃうだろうなぁ。仕方がないだろう、それが彼の愛情表現なら。もちろん、最初はせっぱ詰まった果ての行為だったのが、今や嗜好によって相手を選ぶところまで確実に進んでるけれども。
 ただ、無責任な飼い主が捨てた愛玩動物ならともかく、心底可愛がっていた人たちから手前勝手な理由で略奪した行為やお金を払ってでも“可愛がってくれる人に託したい”という人たちの気持ち踏みにじった行為は、世間一般的にアウトでしょうね。彼の“理屈”としては正しくても。
 しかし、印税でジャガー買ったり、プラダのバック買ったりする俗さはあるのね。
 どんどん子供返りしていく後半はあざとい(笑)。あれじゃ誰も憎めないよ。かわいらしすぎて。

【中島】
 行きすぎたジャーナリストかと思えば、「同僚の奥さんを抱いたり出来ない」と突っぱねるとこはモラリストだったり、渡部さんの熱い告白にあっさり感化されちゃったり、なかなか愉快な人でした。
 彼の一言で一番強烈だったのは、冒頭の「じゃ、石川、死ねば。どうせつまんないものしか作れないんだから」(うろ覚え)でしょうか。この話の中で、コレが一番キツイ台詞だった。
 でも、だからこそ彼は何度でも死の淵から蘇ってくるのだろうな、と。彼は死ねないんですよ。面白いモノがある、面白いコトが起ころうとする。それを見過ごせない。自分が撮ってやるんだという執念。
 渡部さんや勝哉の業がすごくてかすんでるけど、彼の業もけっこう深いと思う。

【勝哉】
 この人を嫌いな人は多いと思うけど、私は嫌いになれない。嫌う前に哀れだと思ってしまう。そんなにも奥さんを愛してたのか、そこまで自分の子供を愛せなかったのか。その身もだえする“どうしようもなさ”が嫌いになれない。
『マイ・ロックンロール・スター』を思い出しました。「俺は息子の愛し方が分からないんだ」。
 勝哉は愛し方以前に、息子を憎んでしまった父親だけど、憎むっていうのは愛する事の反対だと思うので。愛情もなにも無い時は、まったくの無関心でしょう。相手が生きようが死のうが、どうでもいい。それこそ『悪魔の唄』のサヤにとっての眞との関係。
 好きとか嫌いとか言う時点で、少なくともなにかが琴線や逆鱗に触れるわけで、相手とどこかでコミュニケーションを取ってないと愛する事も憎む事も難しくなると思う。愛憎は持続しない。燃料が無い限り。勝哉の場合は、拓哉が一方的に知らせてくる近況が憎悪を募らせる“燃料”になっちゃってたんだけど。
 あの「自分が良かれと思ってやってる事が、他人に取っては迷惑以上の行為」というのは、私自身が恐れている事なので、そこが一番怖かったですね。渡部さんのトリュフ喰いより怖い(むしろトリュフ喰いとかは全然怖くもキモくもない)。
 で、勝哉の行動の理由が分かって話を巻き戻すと、彼の台詞が哀しくて泣けてくる。
「どうやって好きにならせるかばかり考えてた」
 結局、勝哉は渡部を使って美弥子をレイプしようとするんだけど、その前には自分を好きにさせようとするし、渡部や中島を好きにならせようとする。最初に存在するのは、あくまでも「好きにならせる」という感情と言葉であって、肉体をどうこうしようとする意志は無かった。そこが、愛する者との別離だけを繰り返してきた(と思ってる)勝哉の原点なのかな、と。
 そこまで愛される、ひょろっと長くて良くしゃべる奥さんって、どんな人なんだろう。

【ワタシ】
 中盤以降、「しんぺーさん、一体ドコで出てくるの?」と思いながら見てましたが、まさかああいう登場&退場だとは。しかも出演シーンは短いし。でも、インパクトに関してはキャラ随一です。おまけに一番強いよ、“ワタシ”。ツッコミキャラだし。
 勝哉に抱きついて「おじいちゃんのにおいがする!」と言った時、「加齢臭!?」と驚愕したのは内緒。その後ちゃんと(?)「これ、仁丹の匂い?」って言ってましたけどね。結びつかないんだよ、風間杜夫と加齢臭という単語が。
 まぁ、なんというかもう……しんぺーさん、好きじゃ!と思いました。はい。


 なんの気なしに見ていたセットが、じつはプラモデル風だったと気付いたのはラストシーンでした。って、遅っ! だってプラモなんて、一番直近で買ったのは『先行者』ですよ。何年前よ。しかも組み立ててないし。
 そういえば床もプラモ風でした。高速増殖炉が出てくるからメカニカルなモノだとばかり。
 あの増殖炉の事故を暗示するシーン、私は地元の地震を思い出しましたよ。地鳴り(じゃないけど)と、それに続く揺れがリアルで、ちょっと怖かった。


 生きようとする者の上にも、また死の影が訪れるという意味では救いが無いかもしれないけど、「生きよう」と気付かせてくれた事件があり、それに出会えたことは幸福だったのかも。事件自体は悲惨で、それぞれの心に傷が残ったけれども。
 それ考えるのは、あまりにポジティブシンキングすぎるでしょうか。

[ 2005/08/15 09:42 ] 観劇・映画 | TB(-) | CM(0)
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